助成金とは《第1章》
特定の条件を満たすと、行政や団体から受け取れる資金です。融資と違い原則的に返済不要です。
融資による資金調達というのは、必要な不足資金を迅速に調達できるという意味で、活用する意義は大きいのですが、融資はあくまで借入れです。いずれ、利益の中から、返済していかなければなりません。
採用や研修から設備投資や省エネに関するものまで幅広い種類があります。
狭義では厚生労働省が取り扱っているものだけを「助成金」と呼ぶことが多いですが、この章《第1章》では厚生労働省だけではなく経済産業省や地方自治体などが提供しているものを総括して「助成金」として説明していきます。
助成金の運営団体
「省庁」「地方自治体」「民間団体・企業など」の大きく3パターンがあります。
省庁
厚生労働省は労働者の働く環境の整備を目的に掲げている省で、助成金も労働環境や雇用資金関連の助成金があります。簡単にいうと採用や研修などに関する助成金です。条件さえ満たせば受けとれる確率が高い助成金が多いのが特徴です。
経済産業省は民間の経済活力の向上を掲げており、助成金は、起業促進、地域活性化、女性若者の活躍支援、中小企業振興、技術振興などの施策を目的としています。受給するためには、それぞれの助成金(補助金)ごとの募集要件(斬新なアイデアや革新的な技術など)を満たしたうえで応募し、審査を通過することが必要です。厚生労働省の助成金に比べると、受けとれる会社などが少ない点も特徴です。採択(合格)率は、5%を下回るものもあるようです。また経済産業省は助成金ではなく補助金という名称になることが多いです。
この2つの省の助成金以外にも、中小企業庁、総務省、農林水産省、資源エネルギー庁がそれぞれの特色を出した助成金を運用しています。
地方自治体
それぞれの都道府県や市区町村が行っている助成金があります。
各自治体が、地域内の産業振興などの目的で、独自の助成金を実施していることがあります。その内容は多岐に渡ります。
積極的に行っている自治体と、そうでない自治体とで温度差があるのが特徴です。
例(現行制度・過去制度含む)としては、融資の利子補給、信用保証料補助、店舗の家賃補助、ホームページ作成費用補助金、展示会出展費用補助金などがあります。
民間団体・企業など
NPO、財団法人、大手企業、政府系金融機関などが行っている助成金があります。
こちらは特に細分化しており、例えば「食」に関するNPOが東南アジアの食糧事業に関しての助成金をおこなっているなど、かなり多様になっています。
助成金を受けとれるのは、極めて優秀なビジネスプランを持つ数名の起業家という厳しい世界ではありますが、自信があれば、応募してみるのも大きなチャンスをつかむキッカケになるかもしれません。
またこういった助成金は存在自体をあまり知られていない、もしくは調べるのが難しい助成金なので、実際にもらう機会の少ない助成金でもあります。
助成金の最初におさえてほしいポイント
確実にもらえるものではないという点と、申請してもすぐにもらえないという点は、まず助成金の最初におさえてほしいポイントです。
厚生労働省(雇用関係)の助成金《第2章》
この章《第2章》からは、社会保険労務士事務所である弊所の専門分野である「厚生労働省(雇用関係)の助成金」について、さらに説明を進めていきます(ちなみに厚生労働省以外の助成金を専門分野とするのは、中小企業診断士、税理士になろうかと思います)。
厚生労働省(雇用関係)の助成金とは
助成金は政策に連動した施策を実施する事業主などに対して支給されるものです。
実際、厚生労働省(雇用関係)の助成金は、労働者の職業の安定に資するために、失業の予防、雇用機会の増大、雇用状態の是正、労働者の能力開発等を図る目的で支給されます。具体的には、「労働者に教育訓練を行った」、「労働者を雇い入れた」、「福利厚生を充実させた」、などを事業主が実施したとき、実際に生じた費用の一部が支給されます(実施した見返りとして支給されるものなので、計画を提出しただけで支給される性格のものではありません)。
助成金を受給するには要件(条件)を満たす必要があります
厚生労働省の助成金は労働者の職業の安定に資することが目的ですから、助成金を受給するには、
「労働者を保護することが主目的の労働基準法などの法律(労働関係法令)を守ること」がまず必要になってきます。具体的には、労働基準法で定められた出勤簿、賃金台帳を整備し、従業員には賃金等の労働条件が記載された書面を交付し、雇用保険の入・退職の手続を欠かさず、労働保険料もきちんと納付する、といったことがあげられます。実際これらの書類の提出を求められるときがあります。
次に、助成金ごとに設定された主目的の「労働者に教育訓練を行った」などを実施し、それを証明する必要があります。
他にも、「過去3年以内に不正な行為により助成金を受給した、または受給しようとしたことがある」といった不支給事由も定められていますので、助成金ごとに要件などを確認していく必要があります。
さらに、注意すべき点は、申請期間です。助成金には申請期間が厳密に決められていて、1日でも遅れれば申請ができなくなります。「うっかり申請するのを忘れた!」、ということがないように、申請期間には注意してください。
加えて、受給要件を満たして無事に申請を行い、その後審査に通過しても、実際に助成金が振り込まれるまでは時間がかかります。すぐに受給できるわけではないということにも注意してください(例えばキャリアアップ助成金の場合、従業員採用し1年間雇用→助成金の申請に1ヶ月→審査に6ヶ月→振り込まれるまで半月。合計すると、なんと1年半以上かかることもあります)。
助成金の情報の集め方
雇用関係の助成金は厚生労働省が運営しています。そのため、最も正確な情報は厚生労働省の助成金のサイトを見ることをおすすめします。
また、各地の労働局やハローワークには、その年度に実施している助成金の一覧を記載したパンフレットが置いてありますので、1部手元に置いておくと便利です。
助成金は見直しが頻繁に行われます
助成金の種類は国の施策に合わせて年々見直しされ、新しい助成金が創設されることもあれば、廃止される助成金もあります。さらに、同じ助成金でも、受給要件や助成額、申請のための書類について見直しが頻繁に行われます。また予算が決まっているので、知らない間になくなっているということもあり得ます。
助成金の財源は雇用保険の保険料
厚生労働省(雇用関係)の助成金の財源のほとんどは、雇用保険の保険料です(一部障害者雇用納付金から支出されるものもあります)。
雇用保険の保険料率(平成30 年度)は、ほとんどの事業で被保険者の賃金の0.9%です(建設業など一部異なる業種もあります)。このうち労働者の負担が0.3%、残りの0.6%は事業主の負担。事業主が労働者より多く負担する0.3%分が、助成金の財源です。つまり、助成金は事業主が拠出する保険料で成り立っているのです。
事業主が拠出した保険料は、失業給付などの支払いに回るほか、雇用保険2事業の運営費に充当されます。雇用保険2事業とは「雇用安定事業」と「能力開発事業」の2つです。それぞれの事業目的に応じた助成金が用意されています。
・雇用安定事業:失業の予防、雇用機会の増大などで雇用の安定を図る事業
・能力開発事業:労働者の職業訓練や能力開発を行う事業
助成金は中小企業に手厚い
助成金は基本的に中小企業に手厚くなっています。大企業よりも中小企業の助成率が高い(受給できる額が大きい)助成金や、中小企業でなければ受給できない助成金もあります。
助成金が活用されていない理由
多くの会社などでは助成金をうまく活用できていないようです。理由としてあげられているのは・・・
・助成金制度の存在自体を知らない
・助成金という制度は知っているが、どういう助成金を活用したらいいのか分からない
・助成金の受給手続きが複雑で面倒
・助成金制度が頻繁に変わるのでフォローできていない
厚生労働省の助成金の横浜市内にある受付窓口一覧
□神奈川労働局神奈川助成金センター
横浜市中区尾上町5-77-2馬車道ウエストビル5階
045-277-8801 他
※1
□神奈川労働局雇用環境・均等部企画課
横浜市中区北仲通5-57 横浜第二合同庁舎13階
045-211-7357
※2
□ハローワーク横浜(横浜市のうち旭区、西区、中区、神奈川区、磯子区、南区、港南区、保土ヶ谷区の事業主限定)
横浜市中区山下町209帝蚕関内ビル
045-663-8609
※3
□ハローワーク戸塚(横浜市のうち戸塚区、泉区、栄区、瀬谷区の事業主限定)
横浜市戸塚区戸塚町3722
045-864-8609
※3
□ハローワーク川崎(横浜市内は鶴見区の事業主限定)
川崎市川崎区南町17-2
044-244-8609
※3
□ハローワーク横浜南(横浜市内は金沢区の事業主限定)
横浜市金沢区寺前1-9-6
045-788-8609
※3
□ハローワーク港北・新横浜駅前庁舎(横浜市のうち港北区、緑区、青葉区、都筑区の事業主限定)
横浜市港北区新横浜2-14-30日総第17ビル2階
045-478-6464
※3
※1:人材開発支援助成金(旧キャリア形成促進助成金)、職場定着支援助成金、人事評価改善等助成金、企業内人材育成推進助成金、キャリアアップ助成金他
※2:両立支援等助成金限定
※3:トライアル雇用奨励金、障害者トライアル雇用奨励金、障害者雇用安定奨励金(障害者職場定着奨励金)、精神障害者等雇用安定奨励金(重度知的・精神障害者職場支援助成金)限定
神奈川全域や国内全域を見たいときはこちら(雇用関係各種給付金申請等受付窓口一覧)
<引用させて頂いたサイト>
- 助成金の利用条件と活用方法まとめ!研修、採用から設備投資まで
- 【助成金とは?】補助金との違い・募集期間・手続きを紹介
- 知らないと損する助成金制度の基礎知識
- 補助金/助成金を活用しよう。起業家が選べる4種類をご紹介!
- 助成金を理解しよう。そもそも助成金って何ですか?