「まじめに経営してるのに、そんなことでも不支給になってしまうの!」といったものをリストアップしました(いわゆる落とし穴的なもの)。
助成金を支給してきた歴史の中で、一部の不届き者(道や法に背いた者)がいたために、要件が見直されたり、審査が厳しくなったりすることもあるようです。いずれにしても助成金が不支給とならないよう、よく注意してください。

□法令違反

例えば、
①休日(振替休日は除く)や所定労働時間外の研修等に対し、その分の賃金が支払われていない

人材開発支援助成金の対象となる訓練は業務命令とみなされます。業務命令ですから仕事です。仕事ですから賃金支払い義務があり、支払われていなければ、労働基準法違反と扱われ不支給となってしまいます。

②研修等した日に対し、年次有給休暇を取得させた

研修等した日は労働日ですから、年次有給休暇を取得させてはいけません。

□提出期限オーバー

うっかり忘れてしまい書類提出できなかった。地震や豪雨等、やむを得ない事情があれば救済されるかもしれませんが、そうでなければ不支給となってしまいます。

□解雇等

著しく勤務成績不良の従業員が生じた。再三の注意にもかかわらず改まらず改善の見込みがないため、解雇等の処分。
会社としては不可抗力に近いものであり、正当ととれる行為でも、従業員はそうととらえないことがあります。このとき国が「労働者の責めに帰すべき理由による解雇」でなく「事業主都合による解雇」ととれば不支給となってしまいます。
いずれにしても、解雇はのちのち大きなトラブルに発展することがあり、注意が必要です。

□混同(複数の内容が頭の中で混ざってしまったりして、間違えて解釈)

例えば、
①支給対象(となるために必要とされる)経費は、事業主が全額負担していること
②支給対象とならない経費は、旅費、宿泊費など訓練に直接要する経費以外のもの
この2つの内容が頭の中で混ざってしまったりして、「研修のための交通費は会社負担にしなくてもいい」と間違えて解釈。悪意もなく、うっかりであろうと不支給となってしまいます。

□疑義がある

疑義があることを理由に不支給となった経験は、弊所はありません。こうしたことから、この要件で不支給になることは、非常に少ないと思いますが、かと言ってほぼ0%とも言いきれず、なんとも気持ちの悪い要件です。

①疑義とみなされるものとして想像できるもの

例えば、「研修のための交通費は事業主が全額負担」 というのがあります(前出の「混同」の①と同じです)。
これに関し、審査官が「従業員に負担させた疑いがある」と強く感じると、
①会社側より「最寄りの駅から研修場所まで交通費は発生していません」と審査官に説明しても、「いや、歩いて行ったら30分以上かかりますよ。実質無理でしょう。本人に負担させたんじゃないですか!」
②会社側より「定期を利用して研修場所の最寄りの駅まで行ったので交通費は発生していません」と審査官に説明しても、「いや、定期の区間では時間かかりすぎて実質無理でしょう。本人に負担させたんじゃないですか!」

こうした疑いをかけられない様、事前に従業員に「研修に関しては、交通費は会社が全額負担しますから、無理に歩いたりせず、電車・バスを利用してくださいね。」、「どうしても間に合わないときは、タクシーを使っても構わないですよ。そのときは(会社名で)領収書をもらうのを忘れないでくださいね。あとで請求してください。ただ、同じミスはしないようにしてくださいね。」といった細やかな配慮も必要と感じます。

②審査官は細かい所まで見ています

この「細かい所まで見ている」について、ひやっとした経験事例を紹介します。

賃金台帳(給与明細一覧表)に、何かあった時にわかりやすいだろうとつけ加えてあった文言に対し、審査官から「このつけ加えてある文言があると、この助成金の要件を満たしていないと取れますよねぇ。他の添付書類やハローワークのデータベースからすると、ここが間違いのような気もするのですが、実態はどうなんですか?」と電話が入ったことがありました。これに対し、「すいません。これ単なる記載ミスですね。こちらの社長、この方面の知識はそんなに詳しくない所もあるので。この文言の(法律的に)正しい意味を私(社労士)からきちんと説明しておきます。もしかすると、並行して作業していた内容が混ざっちゃって、無意識につけ加えちゃったのかもしれません。いずれにしても単なる記載ミスです。 (少し間を置いて) で、どうしていくかなんですが、その文言、斜線を引きにお伺いしたらよろしいでしょうか?」と審査官に聞いた所、「事情はわかりました。ではこの件に関しては、証明書を提出してください。」

このように、“単なるミスであることの証明書”や“理由書”を提出することで済めばいいのですが、“疑義があるので支給不可”とされたら最悪です。“審査官の裁量次第”で支給不可は有り得る話かなと思いました。ただ経験上、このレベルで支給不可になる可能性は低いと思います。
(対応が遅い、態度が横柄、高圧的、他も含め全体として会社の心証が悪い等あると、事情は変わってくるかもしれません。いずれにしても、提出した社労士が気づくべき話ですが、数百枚にもなる提出書類になると、どこかに甘えが生じてしまい見落としてしまったのかもしれません。反省です。)

□その他の要件の見落とし

その他の要件を見落としたりして、不支給となることがありえます。

□要件を全て満たしても受給できないことがある

この助成金の予算を厚生労働省が使い切ってしまった場合

☆まとめ☆

「助成金の要件を満たすのは、簡単じゃないぞ」
「助成金は、(会社の)予算化しない方がよさそうだ」

こんな感覚でいるのが好ましい、と経験上思います。